都城病院
 

 平成の世となって今上天皇が即位されてから20周年を迎える11月12日は、政府主催により国民こぞっての式典が営まれる予定です。今年はまた今上天皇と美智子皇后さまがご結婚されて50年目のめでたい年でもあります。

  さて、天皇さまと皇后さまは常々短歌を詠んでおられ、年末には恒例としてその年に詠まれた短歌の一部が宮内庁より発表されています。短歌はもちろん我が国の古代より人々が詠みついできたもので、人々の心をそのままに表現し、時には時代を越えて後世の人々に感動を与えるものです。歴代の天皇方は伝統として短歌を詠んでこられました。
  ここで天皇さまと皇后さまの御歌をいくつかご紹介しましょう。平成6年に両陛下は沖縄に行かれましたが、先の沖縄戦で多くの方を失った摩文仁の丘の平和祈念堂で、天皇さまは次の御歌を詠まれました。

激しかりし戦場(いくさば)のあとにたたずめば平らなる海その果てに見ゆ

激しかった戦場の跡に立たれて往時を偲ぶとともに、その果てに見える広く平らな海を望んでおられます。それは平和を願いつつもそれが果たしえないこの世をじっとご覧になってもおられるようです。
平成2年には広島の原爆慰霊碑の前に立たれて次の御歌を詠まれました。

死没者の名簿増え行く慰霊碑のあなた平和の灯(ひ)は燃え盛る

原爆で亡くなった方だけでなく、それからあとも後遺症によって亡くなって行った方々に思いを寄せ、燃え盛る平和の灯に寄せて多くの人々の平和を願っておられるようです。
また阪神・淡路大震災の折には、被災地にすぐにお出かけになり、雨のそぼ降る中をお見舞いになりました。この折に皇后さまは、皇居でみずからお摘みになった水仙の花を亡くなった方々に捧げられました。

なゐをのがれ戸外(こがい)に過ごす人々に雨降るさまを見るは悲しき

「なゐ」とは地震のこと。地震を逃れて戸外に過ごす人々、どれほどか辛いであろうに雨までも降っている。その様を見るのは悲しいことだ、と実に平易な言葉で歌われました。
  皇后美智子様の御歌も素晴らしいものです。平成4年、東京都のハンセン病施設多摩全正園を訪問され、患者の方々をお見舞いになりました。皇后さまは手袋をおとりになり、患者さんの手を握りながらその話に耳を傾けられたということです。

めしひつつ住む人多きこの園に風運びこよ木の香(か)花の香(か)

「めしひ」とは、目が見えないこと。視力を失った人が多く住むこの園に、風よ、運んできてほしい、木の香り、花の香りを。なんとお優しいお心でしょう。
  紹介したい御歌はまだ山ほどありますが、どの御歌にもこの世の平和と人々の幸せへの願いがこめられています。声に出して歌うと、さらにお心が偲ばれると思います。

2009.10.28 小柳左門

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